『Gen V』おもしろい 4話まで感想

『The Boys』のスピンオフドラマ『Gen V』を観てる。今のところめっちゃいいし、正直本編より好きだ。ワリカンが休止中なので金曜日の楽しみができた。

あらすじは、スーパーヒーロー養成する大学での学生生活と陰謀をめぐる、汚いヒーローアカデミアって感じ。しかし味付け(過剰な下ネタとセックス、人体破壊などのゴア描写)がボーイズ同様強烈で、人におすすめする以前に自分が好きだと言いにくい。だってボーイズ好きを公言するオタク……チェンソーマンとかも好きそうじゃないか?(悪口)

でもボーイズは……露悪をゲラゲラ消費するだけじゃなくて……伝えんとするメッセージが真っ当で真摯なので、「エモの照れ隠しの悪趣味描写」に留まらないのがいいよ。まあ「それ込みでも味付けがキツイ」という気持ちはかなり分かる。

◼︎

好きなキャラの話します。エマとジョーダン。そりゃ誰でも好きだろ。まずエマはZ世代(Gen Vだけど)に生まれた女性の生きづらさを体現してて、かなり早い段階で好きになってしまった。サムに寄り添う姿勢もすごい、彼女もまだ不安定な子供なのに……。エマ、(文字通り)等身大の君が最高だよ。4話でジャイアントマンにもなれることが分かったエマだけど、あそこから普通サイズに戻るのキツすぎるだろ😢

ジョーダンは「強靭な体と衝撃波という二つの能力を、性別と同時に自在に切り換える」というコンパウンドVガチャSSRの持ち主だけど、その設定自体がトランスジェンダー・バイジェンダーを描くためのものなのでちゃんと意味があります。ブランク追悼ガラでの両親との会話、X-men2アイスマン並に「マイノリティに対する肉親の反応」だったので驚いた。ジョーダンは出生時男性だけど、平時は女性の姿をしてることが多く(その体で男性とセックスもする)、クラブに遊びに行く・両親の前に出る・正式な式典の場に出る……というときに男性の姿をとるので、その意味するところがかなり分かりやすい。父親に「お前はうちの長男だ」「私たちに嫌がらせをするためにそうして(女性の姿になって)いるのかと思うこともある」「自分で選べるんだからずっと男のままでいることもできるはず」と言われている姿はかなり来るものがあった。また、アジア人差別にまつわる云々も描かれていて、そういやヒーロー側にアジア人キャラいなかったよな……とそこで気づく。ジョーダンもまた死臭がすごくて、覚悟はしてるけどスカジャン姿が最高だからもっと見せてほしい。

ジョーダンの話まだするけど、アンドレとルークの厚い友情(ここもボーイズの括弧つきの「男の友情」とは違うストレートな友愛表現があり、世代の違いを感じる)からは若干の距離がある一方、ケイトとマリーにはなんかちょっと馴染んで女子3人組みたいな感じになってる。ここも好き。マリーとは互いに嫌い合う険悪な関係から一転、急激にラブが芽生えてしまうの少女漫画の文脈で笑った。「何で男に変身してからキスするんだよ!」(女同士のままやらんかい!)と理不尽にキレてたら、最後の朝チュン(?)シーンは女性の姿だったので嬉しかった。ふーん、やるじゃん。

ところでジョーダン、日本語字幕・吹き替えともに女性のときも「オレ」などの一人称を使ってやや粗暴な口調に訳されているんだけど、これは自分では分からないだけで英語もそういうニュアンスが出てるのか? それとも出生時男性=男性ベースのキャラと解釈して翻訳してる? 後者だったらなんだかなあ。

◼︎

好きなシーンの話。ガラの最中、ポラリティが「森」のことでアンドレに釘を刺すシーン。ここのどアップの表情の移り変わりがめっちゃ怖くてドキッとした。ボーイズのときは音楽の使い方が洒落てるな〜とかはあっても、映像がいいと感じることが割と少なかったので余計に印象に残った。このシーンの怖さ、今までに出てきたようなサイコや暴力的な人間の怖さではなく、小市民で保身的な人間の怖さだからグッとくる。

あと、サムの妄想シーンの明らかなセサミストリートパロディ。「彼を殺せ〜(kill him!)」の後の「Kで始まる言葉でした〜」にかなりウワッとなった。セサミストリート味の出し方が嫌すぎる。好きなブラックさだ。

◼︎

ついでにボーイズを観直してたけど、やっぱりシーズン1が一番まとまっている、というよりは目指す先がハッキリしててストレスが少ない。シーズン2や3もハラハラするし続きは気になるけど、「それはそれとして、みんな今何を目標に行動してるんだっけ?」となる。何事もゴールが見えていたほうがいい。そういう意味ですでにシーズン2の撮影が決まってるジェン・ブイ、そこまで引っ張るゴールがあるのかまだよく分からんけど、これからも楽しみ。