『ワンダヴィジョン』感想

おもしろかった。観る前は重い話になるんだろうなとちょっと構えてたけど、さくさく観られてあっという間でした。

よかったところ。やっぱり何と言ってもワンダとヴィジョンのシットコム。ワンダ、ハードな人生を送ってるのにコメディのセンスがありすぎないか? 年代ごとにファッションや劇伴や演技など、ドラマの仕上がり全体が異なっているのも見応えがあった。3話目まで画面比まで違うこだわり。しかしこのパロディドラマ……OPとかCMとか含めて作るのめっちゃ楽しかっただろうな〜! CMの宣伝文句がいちいち示唆的だ(「問題は水に流して、自分の世界に浸りましょう」(石鹸)、「わざと失敗したわけじゃないの」(ペーパータオル)) CM・OP・セリフ、随所に「ワンダのつくった世界」であると匂わせる要素がたくさんあって、観ていて楽しかった。特に好きなシーンは、「ビリーはシェイクスピアにちなんでる。世界は舞台、人は皆役者だ」(ワハハ)←ワハハじゃないが?

そもそも「ワンダが自分の創造した世界をシットコムで放送する」というアイデアMCUがテレビシリーズを開拓した意味はここにあったのか……と思った。話のスケールでも尺の都合でもなく、これをやるためにテレビドラマである必要があったんだな。何故シットコムをつくったのかという疑問にもちゃんと理由が用意されていて、公式二次創作としてやりたかっただけじゃなく、話としてちゃんとうまく機能していると感じた。

よかったところ2つ目、ワンダとヴィジョンの別れのシーン。窓の外から世界の崩壊が近づくのを待つ2人、新鮮さはないけどかなりエモーショナルだったな。個人的にMCUエモいシーンランキングでもわりと上位に入る。

あと、地味にキャスティングや出演の妙にニヤニヤした。ニセトロが20世紀FOX版ピエトロなところとか。『ノー・ウェイ・ホーム』もそうだけど、本来物語そのものとは関係ない大人の事情を逆手にとってニヤリとさせてくる手法、開き直ってるな〜。権利関係でどうこうとか全然ないのか、それとも潤沢な資金が成せるわざ? しかしピエトロおじさん、本当にろくでもなくて笑った。MCUのピエトロはもっとまともだったからな……と思ったけど20世紀FOX版のピエトロももうちょいまともだったろ!偽だから……
ダーシーが久々に出てきたのもよかった。ダーシー、キャラがよくてかわいい。これからもMCUのサブレギュラーとして話にちょいちょい絡んでほしい。

よくなかったところ。アガサとワンダのバトル、というか全体的な対立構造? 「他人を支配してでも自分の作り出した世界を守りたいワンダ」VS「兵器ヴィジョンの再起動のためにワンダを狙う長官」の争いに乗り切れない(モニカ〜何とかしてくれ〜)うちに、第三勢力「ワンダの力を狙う知らん世界の文脈で生きてる人(アガサ)」が躍り出てきて、割と遠い目で観てました。
Agatha all along(すべてアガサの仕業)って歌ってるけど、この騒動73くらいでワンダの仕業じゃない?(7がワンダ) 故意であるかないかはさておいて。アガサがわざとワンダに世界を造らせたならともかく、これワンダが自分で始めたことだしな……

アガサのとこの魔女内輪揉めとか、ダークホールドがどうの……掟を破って黒魔術がどうの……知らん世界の話が進んでいく……。アガサとワンダの戦い、決着の付け方は「なるほど〜」と思ったけど、ルールを知らないスポーツを観ているような気分だった。でもアガサは好きで〜す。一見陽気な腹黒悪女キャラって最高〜。Agatha all alongも最高〜。

あとさ……ワンダのティアラ、その……ダサくないか……ふつうに……。スカーレット・ウィッチ大好きアメコミオタクなら盛り上がるのかもしれないけど、そこまで詳しくないので……。MCU、「ケレンみ溢れるヒーローの容貌を変に誤魔化さずに打ち出してて潔いし、ちゃんと格好いい」と「それはそれとして現実の人間で見るとかなり素っ頓狂な格好してるな」が危うい均衡で成り立ってると思ってだけど、今回は後者が勝っていたように感じた。シットコムのママ・ワンダで戦う姿がいい感じだったからかも。ハロウィーンの仮装に使ってたくらいだからその客観化はできてるのかな。ついでに「あなたはスカーレット・ウィッチなのよ」というくだりもあまり響くものがなくて……丸1日経ってから「そういえばMCUのワンダはスカーレット・ウィッチって呼ばれてなかったんだっけ?」と気づいた。

これはよくない点ではないかもしれないが、ワンダは割と気の毒だったな……。人生なんて誰でも大なり小なりハードだと思ってるけど、いくらなんでも踏んだり蹴ったりすぎる。その上ドクター・ストレンジMoMで大変なことになってるらしいので、なんというかドンマイだな……。

作品全体としては、正直ワンダもヴィジョンもそこまで思い入れが強いキャラじゃなかったけど、作り込みがすごくておもしろかったし、2人の愛を見られてよかった。自分がぼーっと観てるせいもあるが、今までこの2人「なんか知らんけどグループの男女がいつの間にかくっついていた……」ぐらいの感じだったんだよな……(っていうかナターシャとバナーは完全にそうだろ)。ともかく、ワンダは傷ついた自分にヴィジョンが寄り添おうとしてくれたこと、「喪う痛みも人を愛する気持ちの証」という言葉に支えられて、ヴィジョンはAIから生まれて自我に疑問を持っていたから、ワンダが自分を愛して「ワンダの愛する人」として定義されたのが嬉しかったんだな。なるほどね。理解した。最後にワンダがヴィジョンを「私の悲しみ、私の希望」と語りかけるのにはグッときた。

ところでGoogleで本作を検索したら、ドラマが「シットコム」に分類されてて笑った。邪悪!